(佐藤康行著書「生命の覚醒(いのちのめざめ)」より引用)
レストランの店長をしている小田切剛志さん(仮名・50歳)は、とても落ち込んでいました。店は売上が伸びず厳しい状態で、店の従業員との人間関係もうまくいかず、これから先この仕事をやっていく自信がなくなっていました。
そんな彼も、真我に出会って以来、まるで人が変わったように明るくなりました。
店では、従業員から「店長、何だか急に明るくなりましたね!」といわれました。人と話をするのが楽しく、従業員一人一人に必ず声をかけるようになりました。それからは、従業員たちもニコニコと話してくれるようになり、店全体の雰囲気がパアーッと明るくなりました。
またこんなこともありました。
「先日、雪が積もって交通機関が麻痺した日があったんです。普段なら家から店までは車で二十分ほどで行くんですが、この日はかなりかかりそうでした。以前の私なら、とにかく早く店を開けに行かなくては、と無理やりにでも車で行ったと思います。
でもその日は、店の近所に住むパートの人に店を開けてもらうように電話をして、自分は歩いて行ったんです。久しぶりの雪景色はとてもきれいで感動しました。それに、車で通っていた時には気づかなかった小さな池を発見したり、カモがいっぱい飛んでいるのを見ることもできたんです。雪のおかげです」
今は仕事も楽しくて仕方がないという小田切さんは、さらに続けました。
「自分の心の時計がゆっくり動くようになったんです。仕事をしていてもゆったりとしていて余裕があるから、ちっとも疲れないんですよ。それに毎日何かしら、あぁ嬉しかったなぁ、楽しかったなぁ、という出来事があるんです」
新幹線に乗って窓から見る景色と、各駅停車に乗って窓から見る景色、自転車に乗って見る景色と、歩いて見る景色とでは、同じ所を通っても、全部違う景色に見えるでしょう。
普段、あまりにも忙しいと、家族のことや身近なことが見えなくなります。会社をリストラに遭って、仕事がなくなってから、家族のことや子どものことがよく見えるようになったということがあります。
まさに小田切さんは、本当の自分に気づくことによって、自分の心の時計がゆっくり動くようになったのです。
そのことによって、一度止まってまわりの物事を見渡してみることができるのです。そうすると、足元には、普段気づかなかった小さなタンポポや、アリ、トンボ・・・、いろいろな生命、いろいろな景色があることに気づくのです。
そしてそこから、今までの生き方が根本的に変わることがあるのです。きっと小田切さんは、生きている生命の本質的なものに気づかれたのだと思います。
足元を見ることが大切なのです。心に余裕を持つと、いろいろな景色が見えてきて、今までの喜びとは違う喜びを味わうことができるのです。ただあくせくしないで、心に余裕を持って物事を捉えていくことです。
私たちの心というのは、常に動いているのです。「不動心」という言葉がありますが、本当は不動心などないのです。心は常に動いています。どんなに高僧でも、後ろから知らない人にピシャピシャと何発か殴られたら、きっと「何をするんだ」と腹が立つでしょう。心には不動心というのはないのです。
本当の不動心というのは、真我しかないのです。本当の自分に目覚めた時に、全く動かない確固としたものになるのです。そこに余裕が出てくるのです。
(佐藤康行著書「生命の覚醒(いのちのめざめ)」より引用)
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